2012年5月3日木曜日

歩かない旅人: 月刊雑誌。週刊雑誌を読んで


 怒涛の3月も今日で終わります。連日どの新聞もどの雑誌もどのテレビもこの話題一色です。普通だったらこれだけ同じ話題が続けば、一寸ばかり、うっとうしい気分になるところですが、天災に続いて、人災がこうも立て続けに、あちこちで起き、いつ頃までに解決するかの見通しさえ立ちません。

 今日も一番のニュースは原発関係です。この件に関しては明らかに人災の方が圧倒的に比率が大きいでしょう。今日はその人災の大元、「菅政権にまつわるそれぞれの論評の中から、渡部昇一氏(上智大学名誉教授)の雑誌『WiLL』5月号より(総力大特集 東北関東大震災)より、まず渡部先生の書かれた文を記録します。

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 【天も怒った 史上最低の宰相】 渡部昇一

 

 菅さんの全ての欠点の元は、市民運動家出身であることに集約されています。彼の政治上の決断力の弱さも、実はここからきています。

 そもそもなぜ「市民」というのか。多分、彼らはローマの市民権のイメージだけをうまく使おうとしたのでしょう。しかし「市民権」という言葉があるように、ローマの市民になるか否かは、逆を返せば蛮族であるか否かというのと同じくらいの違いがありました。

 市民になれば様々な権利を得られますが、その代わりに兵役の義務があり、ローマのために死ぬ覚悟が求められます。「市民」であるということは、権利と同時に義務も背負うものなのです。

 ところが、菅さんら「市民活動家」がこれまで主張してきた「市民」なる者は、無責任極まりないものでした。「市民のために命をかける」覚悟もなく、ただ何となく「市民」という言葉を使っている。いや、さらに悪くて、日本の場合は「市民」を名乗る者は「国民ではない」ことを言いたいがため、反日的運動のためにその名を使っているに過ぎないのです。

 その証拠に、菅さんは徹底して「国民」という言葉を使いたがりませんでした。この時点で、すでに「市民」という言葉は元の意味を失って、ただただ「国」というものが嫌いな人たちの集まりであり、致命的に国家観が欠如している、というところまで堕ちてしまっているのです。

 その思想は、総理になって嫌々ながら「国民の皆様」などと言うようになってからも透けて見えてきます。


budhism不安

 菅さんは所信表明等で年金や子供手当、福祉政策などについては声高に叫んでも、外交、防衛、治安というものにはほとんどふれてきませんでした。

 しかし、子育てや福祉は各家庭で個人が努力する余地のあるものであって、外交、防衛、治安は個人単位では全く出来ない事です。「夜警国家」というのは国家を考える上で重要な観念であり、国家が果たすべき第一の義務であるはずです。

 しかし国家嫌いの市民運動家たちは、これらのことを考えるのがイヤデイヤで仕方がないのでしょう。なぜ国家を嫌うのか。それは初期のマルクス主義思想です。「万国の労働者よ、手をつなげ」と叫んでいた頃のまま、その思想を引きずっているのです。

 ところが、そのマルクス主義をを踏襲した一番の国であるスターリン時代のソビエトは、他人の国を終戦後に火事場泥棒よろしく掠め取った、ゴリゴリの帝国主義国家でした。その次の内閣も、我利我利亡者的帝国主義国家になっています。本家のほうはすでに「市民」志向などとっくに捨て去っているのに、菅さんは気付いていないままなのでしょう。

 先進国の中では、日本の左翼が今のところもっとも「市民運動」が盛んであり、功を奏しているのではないかと思います。それは本来あるべき姿ではないのですが、これまで日本は国防問題を考えなくても済んだ時代を長く過ごして来ました。

 「国防などアメリカに任せておけば、日本は経済活動に専念出来て、何と気楽なことだろう」と思ってしまったためです。防衛をアメリカ任せにして、のうのうと繁栄お貪り食っている姿は、あたかも親が全ての面倒を見てくれている道楽息子と同じ立場であることに気付いていない。非常に情けないことです。

 この思想の大元は終戦時にさかのぼります。終戦を迎えたのは、私の世代が中学3年生の頃でした。それより上は、歳の近い世代でも戦争に行っていた。にもかかわらず、敗戦となり「国防の義務」が見かけ上なくなってみたら、「何と楽なことか」という開放感に惑わされてしまったのです。

 そして、その開放感をうまくイデオロギーに結び付けたのが菅さんら市民運動家たちでした。そして日本政府が正当な軍事力を持つことを阻んで来た。そしてそれは間接的では有ったとしても、中国、ソ連、北朝鮮を利する、利敵行為であったことは間違いないのです。

 《日本より「心の祖国」》


聖書のパニック発作

 その観点から皆さんを眺めてみると、問題が浮き上がってくるのです。それは菅さんら市民運動家が必ず持ちだす「憲法九条」です。本来であれば、自民党はこの問題を菅さんにぶつけなければならなかった。ただし、「九条」をストレートにぶつけても、敵もさるもの慣れたものでいろいろと言い返してくるに決まっている。そこで持ちだすべきは憲法前文なのせす。

 私はこのことを何度も指摘して来ましたが、もう一度原文である英文とあわせてみてみましょう。〈日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。(英文略)。

 国の基本を定める憲法の前文には、このように恐るべきことが書かれている。日本国民の安全と生存(security and existence)を諸国民の手に委ねるというのです。こんなおかしな話は、他を捜しても世界中何処にもありません。

 この点を菅さんに聞いてみてください。「日本国民の安全と生存を他国の人間に任せておいていいのか」と。さすがの菅さんも、「それでよい」とは答えられない筈です。

 しかし、今に至っても戦後の誤魔化しに騙され続けて抜け出せない人がいる。社民党や共産党、民主党だけではなく、自民党にさえ少なからず存在している。それはひとえに、市民運動家たちが日本人が戦後感じた「ほっ」とした気持ちを利用してきたからです。

 しかし、その市民運動家が政権を取ってみたら、そんな事は言っていられなくなり、早々とひずみが生じて来ました。それを如実にあらわしたのが、尖閣で起こった漁船衝突事件です。本来、領海侵犯や公務執行妨害で逮捕・起訴されるべき漁船の船長を、ほぼ無罪放免にしてしまったのです。それは一体なぜでしょうか。

 菅さんのみならず、この件については当時陰の実力者だった仙谷官房長官の影響も大きかったようですが、とにかく、彼らが活動家としてもっとも「輝いていた」時代から、彼らの祖国は中国であり、ソ連であり、北朝鮮だったためです。「心の祖国」に対して厳しい姿勢で臨むことなど、端から考えていなかったに違いない。


祈りを通して、カトリック、克服不安

 そのスキを見抜かれていたらこそ、あの一連の尖閣事件は起こったのです。さらには戦後初めて、メドベージェフ大統領が北方領土に降り立ちました。鳩山内閣以来のアメリカとの外交的間隙が、ロシアに北方領土に関して一種のメッセージを送った結果になったのです。

 これに対する菅さんの発言は「上陸は暴挙」であると非難するなど対中国よりは幾分勢いはありましたが、実質的には何らの対応策もとっていない。どっちみち、外交的対応がどこか甘くなることを相手に見透かされているのです。

 《国賊はクビにせよ!》

 脇が甘いからこそ付け込まれることをあきらかにしたのは、菅さんに対する外国人からの献金です。そのパチンコ屋を経営する外国人男性は韓国人だと見られているとのことです。

 菅さんの献金が発覚する直前に、前原前外相の献金問題も明るみに出ていたのに、なぜ徹底して調べなかったのかと理解に苦しみますが、この献金が物語っているものは予想以上に大きいのです。

 昨年8月、菅さんは「菅談話」を発表しています。党内の反対を押し切って、当時の仙谷官房長官が強力に推し進めたとのことですが、その内容は「植民地化への謝罪」「サハリン残留韓国人への支援」「文化財の引き渡し」などの内容が盛り込まれた、コリア人を喜ばせるための極めて自虐的な談話でした。

 そして、菅さんの前に在日韓国人からの献金が発覚した前原前外相も相変わらず脇が甘い。以前民主党代表職を「偽メール事件」で辞任したころもそうでした。献金については、本当に「うっかり」一度だけもらってしまったというならまだしも、「献金をくれていた焼肉屋の在日韓国人女性を中学生の頃から知っていた」という。在日韓国人とわかっていながら献金を受けていたというのは、すぐにでも議員を辞職するべき大罪です。

 ところが、菅さんは前原氏を「慰留」したという。「外国人から献金を貰ったくらいで辞める必要はない」ということです。あきれるほかありません。そして忘れてはならないのが、韓国の議員とともに連名で「日本政府に竹島の領有権主張を中止するよう求める共同宣言」を提出した民主党の土肥隆一議員です。


 韓国・ハンナラ党のファン・ウヨ議員は「日本政府は歴史教科書の歪曲と独島の領有権の主張など、間違った歴史を教えるのを即刻中止せよ」との声明を述べましたが、その席にこの土肥議員も列席していたのです。

 本来であれば党を除名され、議員辞職をして当然ですが、菅さんは「遺憾に思います」と述べるにとどまりました。これには驚きましたが、さらに驚いたのがこの声明が問題とされた直後に土肥議員が話した内容です。

 「その(竹島放棄要求宣言)内容については、十分議論する暇がなくて。まぁ、韓国がこれを出したいというから、好いだろうと決断しました。これは無理だと言って、やめれば良かったかなと今は思ってますけど(竹島に関しては)それはもう、日本の領土ですよ。あの(宣言)の文章はやっぱりね、今読みなおして見ても相当一方的だなということは感じるけれどもその場にのまれちゃったちゃあ、のまれたし。こんなにマスコミに取り上げられるとは思ってもみなかったからねぇ。まァ、うかつでした」

 これが与党議員の言葉だとはとても信じがたい内容ですが、この言葉をもってしても、菅さんは土肥議員をクビに出来なかったのです。思い出してください。「日教組をぶッ壊す」といった中山成彬国交大臣(当時)をクビにせよと騒ぎ、「日本はいい国」と言った田母神さんを「更迭せよ」と騒いだのは民主党です。

 これらの発言よりも、土肥議員のほうが本質的にひどい。土肥議員は「党に迷惑をかけた」として衆院政治倫理審査会会長と党常任幹事会議長の役職を辞任したのち、民主党を離党しました。しかし、本来であれば党のためではなく、国民のためにクビにすべきでしょう、明白な国賊ですから。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



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